卒FIT後の太陽光発電を企業へ――相対契約・PPAという選択肢
FIT期間が終わった発電所の電気を、
再エネを求める企業に届けませんか?
脱炭素に取り組む企業を中心に、再生可能エネルギーの電気やその環境価値を、長期にわたって確保したいという需要が高まっています。FIT期間を終えた発電所は、売電先や契約の形を自ら選べるようになります。その選択肢のひとつが、企業との「相対契約」や「PPA(電力購入契約)」です。
このページでは、発電所のオーナー様に向けて、相対契約・PPAの仕組みと、始める前に確認しておきたいポイントをご紹介します。
※本ページは、資源エネルギー庁の公表資料、「変更内容ごとの変更手続の整理表」(2026年4月1日更新)、RE100技術要件(2022年12月改定、2025年3月改定)等に基づいて作成しています。個別の契約の可否や条件は、契約の相手方や関係機関への確認が必要です。
相対契約・PPAとは
相対契約・PPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)は、発電事業者と電気を使う企業(需要家)が、あらかじめ価格や期間を決めて、再エネの電気やその環境価値を長期で取引する契約です。発電所から離れた場所にある企業へ届ける形は「オフサイトPPA」と呼ばれます。主に次の2つの型があります。
フィジカルPPA
発電所の電気と環境価値を、小売電気事業者を通じて企業に届ける形です。電気は送配電網を通って企業の事業所へ供給されます。小売電気事業者を経由するため、企業側の電気料金には再エネ賦課金がかかります。
バーチャルPPA
電気そのものは卸電力市場などで売り、環境価値(非化石証書など)だけを企業に届ける形です。あらかじめ決めた価格と市場価格との差額を、発電事業者と企業の間で精算します。企業は、今の電力契約を変えずに再エネの環境価値を得られます。
主な売電方法の比較
| 方法 | 取引の相手 | 主なメリット | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 卒FIT後の通常の売電 | 小売電気事業者など | 手続きが比較的簡単で、始めやすい | 単価はFIT時より下がるのが一般的。契約期間が短い場合が多い |
| フィジカルPPA | 企業(小売電気事業者を経由) | 長期の固定的な価格で、収入の見通しを立てやすい。企業の再エネ需要を取り込める | 小売電気事業者を含めた三者の調整が必要。発電量の変動への対応(需給管理)が必要 |
| バーチャルPPA | 企業(環境価値のみ) | 企業側の電力契約を変えずに取引できる。遠方の企業とも組みやすい | 電気の売り先(市場など)を別に確保する必要がある。差額精算の仕組みの理解が必要 |
いつから始められるか
- 原則は卒FIT後:FIT期間中の電気は、特定契約により買い取られます。そのため、企業との相対契約・PPAは、原則として調達期間が終わった後の選択肢となります。
- FIPへの移行で前倒しできる場合がある:一定の条件を満たす設備は、FIT期間中にFIP制度へ移行できる場合があります。FIPでは、市場での売電や相対契約と組み合わせやすくなります。移行には、経済産業大臣への申請が必要です。
- 準備は数年前から:契約の相手方の確保、小売電気事業者などとの調整、土地や設備の確認には時間がかかります。FIT期間の終了の数年前から準備を始めるのが理想です。
RE100と「15年ルール」とは
企業に再エネの電気を届けるうえで知っておきたいのが、「RE100」と、その技術要件にある「15年ルール」です。
RE100とは
事業で使う電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す、世界の主要企業が加盟する国際的なイニシアチブです。日本からも多くの企業が参加しています。
技術要件とは
RE100の加盟企業が「再エネを使った」と報告するために守るべきルールです。どのような発電所から、どのような方法で調達した電力や証書を、再エネとして数えてよいかが定められています。
15年ルールの内容
2022年の技術要件の改定により、加盟企業が2024年1月以降に調達する電力については、原則として、新設の発電設備か、運転開始(またはリパワリング)から15年以内の発電設備からの電力・証書を使うことが求められるようになりました。古い発電所の再エネ価値を買うだけでは、新しい再エネ設備が増えないためです。
15年ルールがかからない場合
- 自家発電:企業が自ら保有する発電設備の電力
- 長期のPPAなど:「長期の契約」で、「発電所が特定されており」、「企業が当初の買い手(オフテイカー)として結んだ」契約(フィジカルPPA、バーチャルPPAなど)
- 2024年1月より前に結んだ契約
- 15%までの例外:年間の電力使用量の15%までは、15年ルールを満たさない電力・証書も使えます
反対に、短期の契約、発電所を特定しない小売の再エネメニュー、市場で購入する証書などには、15年ルールがかかります。
また、2025年3月の改定で、リパワリング(設備の更新)を行った発電設備については、更新後の運転開始時点から電力・証書を購入し、その実績を確認できる場合に、15年を超えて使えることが明確にされました。
卒FIT後の発電所にとっての意味
FIT期間を終えた発電所は、運転開始から15年を超えていることが多いため、証書だけを売る方法や短期の契約では、RE100に取り組む企業から選ばれにくくなるおそれがあります。
一方、条件を満たす長期のPPAは、15年ルールの対象外です。ただし、FIT期間中は電気を送配電事業者などに売ってきた発電所の場合、新しい契約の相手の企業が「当初の買い手」にあたるかどうかは、個別の確認が必要です。契約を検討する際は、相手方の企業が何を目的としているか(RE100、排出量の削減、電気料金の安定、地域貢献など)を確認し、それに合った提案をすることが大切です。
そのほかの注意点
- 再エネ賦課金はかかる:フィジカルPPAでも、小売電気事業者を経由するため、企業側の電気料金には再エネ賦課金がかかります。賦課金がかからないのは、要件を満たす自己託送などに限られます。
- 長期契約に見合う体制が必要:PPAは10年以上の長期契約になることが多く、その期間の土地の権利、設備の保守、故障時の対応を確保しておく必要があります。
- 発電量は天候で変わる:発電量の変動や、出力制御の影響をどう扱うかを、契約で決めておく必要があります。
- 卒FIT後も手続きが残る:調達期間が終わった後も、事業者名や住所などに変更があれば、再エネ特措法上の変更届出が必要な場合があります。
準備のチェックリスト
- FIT期間の終了時期:認定通知書や電子申請システムで確認できます。
- 運転開始日:RE100の15年ルールとの関係で、企業から確認されることがあります。
- 土地の権利:借地の場合、賃貸借契約をPPAの契約期間まで続けられるか、延長できるかを確認します。
- 設備の状態:パネル・パワーコンディショナーの劣化、保守点検の記録、リパワリング(設備の更新)の要否を確認します。
- 発電の実績:過去の発電量のデータは、契約の相手方が条件を検討する際の重要な資料になります。
- 廃棄費用の積立:積立額と、将来の撤去費用の見込みを確認します。
- 認定情報の正確さ:事業者名、住所、保守点検責任者などの認定情報が、実態と合っているか確認します。
当事務所がお手伝いできること
認定情報・権利関係の整理
FIT期間の終了時期、運転開始日、認定内容、土地の権利関係など、契約の前提となる情報を整理します。
再エネ特措法上の手続き
FIPへの移行や、事業者情報の変更など、経済産業大臣への申請・届出の書類作成と電子申請を代行します。
契約書の作成・確認のサポート
相対契約に関する契約書など、権利義務に関する書類の作成・確認をサポートします。
専門家との連携
税務は税理士、登記は司法書士と連携します。契約の相手方との交渉や、紛争性のある案件は、弁護士へご案内します。
※当事務所は、電気の売買の仲介や、契約の相手方の紹介を行うものではありません。売電価格の査定や投資判断、RE100の適合性の判定を行うものでもありません。
卒FIT後の売電先を、今のうちから考えませんか。
相対契約・PPAについて相談する相談無料・秘密厳守/返信の目安:2〜3営業日以内
ご用意いただくもの:発電所の所在地・出力・設備ID・運転開始日(分かる範囲で)
売却・継続運用・自己託送などを含めた比較は、「卒FIT後の選択肢と比較のポイント」のページをご覧ください。
よくある質問
低圧(50kW未満)の小さな発電所でも、PPAはできますか?
可能性はあります。ただし、1か所の発電量が小さいと、企業や小売電気事業者にとって取引の手間に見合わない場合があります。そのため、複数の発電所をまとめて契約する形が検討されることもあります。まずは、発電量の実績と、契約期間中の土地・設備の状況を整理することから始めるのがおすすめです。
FIT期間中に、企業とPPAの契約を結んでおくことはできますか?
FIT期間中の電気は特定契約により買い取られるため、その期間の電気を企業に届けることは原則としてできません。ただし、卒FIT後の取引について、事前に交渉や準備を進めることは可能です。また、一定の条件を満たす設備は、FIPへ移行することで、FIT期間の終了を待たずに相対契約と組み合わせられる場合があります。
PPAにすれば、企業の再エネ賦課金はゼロになりますか?
なりません。フィジカルPPAは小売電気事業者を経由するため、企業側の電気料金には再エネ賦課金がかかります。賦課金がかからないのは、発電設備を自ら設置した者が、自社や密接な関係にある者に電気を送る自己託送など、限られた場合です。
運転開始から15年を超えた発電所は、RE100の企業に選ばれませんか?
一概にはいえません。15年ルールは、短期の契約や、市場で購入する証書などにかかるルールです。「長期の契約」「発電所が特定されている」「企業が当初の買い手として結んだ」という条件を満たすPPAは、15年ルールの対象外です。ただし、FIT期間中に電気を売ってきた発電所の場合、新しい契約の相手が「当初の買い手」にあたるかは確認が必要です。そのほか、年間の使用量の15%までの例外や、リパワリングを行った設備の例外もあります。また、RE100以外の目的で再エネを求める企業もあります。
