卒FIT後の活用・自社への再エネ供給をお考えの方へ

自己託送の要件と注意点
(2024年2月改正後のルール)

自己託送とは、自社で設置した発電所の電気を、電力会社の送配電網を通じて、離れた場所にある自社やグループ会社の工場・事業所に送る仕組みです。小売電気事業者を通さずに、自社の再エネ電気を使えることから注目されています。
一方で、2024年2月の指針改正で要件が厳しくなり、「発電所を買って自己託送に使う」といった方法は認められなくなりました。

  • Point 1自己託送に使えるのは、自ら設置した発電設備だけです。既設の発電所を購入・リースした設備は使えません。
  • Point 2送電先は、自社か、資本関係などの「密接な関係」がある相手に限られます。
  • Point 3資本関係のない相手との「組合型」は、新設の再エネ設備に限られ、卒FIT設備は使えません。

最終確認日:2026年10月4日
根拠:電気事業法第2条第1項第5号ロ・第27条の33、電気事業法施行規則第2条・第3条、資源エネルギー庁「自己託送に係る指針」(2024年2月12日改正)、同「自己託送に関するQ&A」

1. 自己託送とは

自己託送は、発電用・蓄電用の自家用電気工作物などを設置した者が、その設備で発電(放電)した電気を、一般送配電事業者(東北エリアでは東北電力ネットワーク)の送配電網を通じて、別の場所にある自社の工場などに送るときに利用する送電サービスです。2013年に制度化されました。

  1. 発電側自社(またはグループ会社)が設置した発電所
    例:郊外の野立て太陽光発電所
  2. 送電一般送配電事業者の送配電網
    託送料金を支払って送電します。
  3. 需要側自社(またはグループ会社)の工場・事業所
    例:本社工場で電気を使用

誰にでも電気を送れる仕組みではありません

自己託送は、あくまで「自分の電気を、自分(または自分と一体と言える相手)に送る」ための制度です。資本関係などのない第三者に電気を売る場合は、自己託送ではなく、小売電気事業者を通した電力購入契約(PPA)などの方法を検討することになります。

2. 自己託送の4つの要件

資源エネルギー庁のQ&Aでは、次の4つの要件をすべて満たす必要があるとされています。

要件 内容
① 非電気事業用電気工作物であること 発電事業や小売電気事業などの電気事業に使う設備ではないこと。
※1つの発電所の一部(例:3割分)だけを自己託送に使い、残りを売電することも、その部分に限って認められる場合があります。
② 自ら設置した設備であること 他者から譲渡やリース(貸与)を受けた設備ではなく、自ら設置した設備を、自ら維持・運用していること。
③ 送電先と「密接な関係」があること 設備を維持・運用する者と、電気を受け取る地点の需要家との間に、資本関係などの密接な関係があること(次の第3節)。
④ 最終消費者への供給であること 電気を受け取る需要場所で、実際に電気を使う者への供給であること。受け取った電気を、密接な関係のないテナントなどに融通する形は認められません。

3. 「密接な関係」とは

指針では、次の6つの類型が示されています(電気事業法施行規則第2条・第3条)。

類型 内容
(1) 生産工程の関係 生産工程で原材料や製品などの受渡しがあり、それを第三者との受渡しに代えることが難しい関係。
(2) 資本関係 会社法上の親会社と子会社の関係、同じ親会社の子会社どうしの関係、その他これらに準ずる関係。
(3) 人的関係 一方から他方に、役員の過半数が派遣されている関係。
(4) (1)〜(3)の組合せ (1)〜(3)のそれぞれ単独では不十分でも、合わせて見れば密接な関係があると判断される関係。
(5) 長期の取引関係 事業に必要で、ほかに代わりがない原材料・製品・役務などの提供が長期にわたり続き、社会通念上一つの企業とみなせる関係。
(6) 組合 供給者と需要家が共同で組合を設立し、一定の要件をすべて満たす場合(第5節)。
  • 地方公共団体と指定管理者の間では、契約書や協定書を一般送配電事業者に示すことで、密接な関係があるものとして扱われます。
  • フランチャイズ本部と加盟店のような関係でも、上記の要件を満たさなければ認められません。

4. 2024年2月の改正で厳しくなった点

他社が開発した発電所を需要家に名義だけ移して自己託送の形をとるなど、制度の趣旨に合わない利用が広がったことを受け、2024年2月12日に指針が改正されました。

① 譲渡・リースを受けた設備は使えない

  • 既設の発電所を他者から購入した場合、リース契約(所有権が移転するものを含む)、エネルギーサービス契約などで他者が設置した設備を使う場合は、自己託送が認められません。
  • 例外1:自社の完全子会社(株式・持分の全部を持つ会社)が設置した設備を、自社が譲り受けて維持・運用する場合は認められます。
  • 例外2:工事請負契約で設置工事を依頼し、完成に伴って契約どおり所有権が移る場合は、「自ら設置した」ものとして扱われます。

② 名義だけの管理者は認められない

保守などの維持管理業務を外部に委託すること自体は問題ありません。しかし、需要家が設備を維持・運用する根拠を持たないまま、名義上だけ管理責任者になる形は認められません。

③ 需要場所内での他者への融通の制限

電気を受け取る需要場所で、受電設備の保有者からテナントなど他者へ電気を融通している場合は、原則として自己託送が認められません。その需要場所内の他者全員と密接な関係があるなど、例外にあたる場合に限り認められます。また、他者から譲渡やリースを受けた受変電設備を使っている場合も認められません。

④ 宣誓書などの提出

自己託送を利用する際は、自ら設置した設備であることや、密接な関係を証する書類を提出します。あわせて、密接な関係のない最終消費者がいないことの宣誓書を提出し、虚偽があった場合は契約の解除を受け入れることに、あらかじめ同意する必要があります。

※2023年12月31日までに接続検討の申込み(低圧は接続契約の申込み)が完了している設備には、改正前の指針が適用されます。ただし、申込み後に自己託送利用者の名義を変更する場合や、新たに設備を追加する場合などは、改正後の指針が適用されます。

5. 組合型の自己託送

2021年11月の改正で、資本関係などがない会社どうしでも、共同で組合を設立し、次の要件をすべて満たせば、密接な関係があるものとみなされるようになりました。

  1. 組合契約書で、組合が長期にわたり存続することが明らかになっていること(供給者がすぐに脱退して供給が途絶えないような規定など)
  2. 組合員名簿などに、供給者と需要家の氏名・名称が記載されていること
  3. 組合契約書で、電気料金の決め方と送配電設備の工事費用の負担方法が明らかになっていて、特定の組合員を不当に差別しないなど、需要家の利益を害するおそれがないこと
  4. 組合員が新たに設置し、自ら維持・運用する再エネ発電設備(FIT/FIPの認定発電設備を除く)などによる電気の取引であること

使える組合・使えない組合

民法上の組合や、有限責任事業組合(LLP)は対象になります。匿名組合と中小企業等協同組合は、自由に脱退できるなど「長期にわたり存続する」とは言えないため、対象外です。

「新たに設置する」の意味

組合型の自己託送のために新しく設置し、送配電網に接続する設備に限られます。すでに稼働している発電所や、FITの買取期間が終わった(卒FIT)発電所は対象外です。

  • 1つの発電所から複数の需要場所(複数の者)に送る場合は、特定供給の許可が必要になり、通常の自己託送とは別のルールが適用されます。
  • 組合型では、保安のルールに加えて、柵塀や標識の設置、地域住民との適切なコミュニケーション、廃棄等費用の確保なども重要とされています。

6. 卒FIT・既存の発電所で検討するときの注意点

FITの買取期間が終わった後の活用方法として自己託送を検討する場合は、「誰が設置した設備か」と「送電先とどんな関係か」で、できることが大きく変わります。

ケース 自己託送の可否
自社が自ら設置した卒FIT発電所の電気を、自社の別の工場に送る 検討可能
ほかの要件(非電気事業用電気工作物であることなど)の確認が必要
自社が自ら設置した卒FIT発電所の電気を、親会社や子会社など資本関係のあるグループ会社に送る 検討可能
特定供給の許可が必要になる場合あり
他社が設置した既設の発電所を購入して、自社の工場に送る 不可
譲渡を受けた設備のため(完全子会社からの譲渡を除く)
資本関係のない会社と組合をつくり、既存の卒FIT発電所の電気を送る 不可
組合型は新設設備に限られるため

発電所を保有する会社ごと、グループに迎える方法について

発電所を自ら設置した合同会社(SPC)などの持分・株式を取得し、需要家の子会社とする方法も考えられます。この場合、設備を設置したSPC自身が引き続き維持・運用し、親会社となった需要家の工場に送る形になるため、「自ら設置した設備」「資本関係」という要件の筋は通ると考えられます。

この方法は、必ず事前に確認してください

  • 指針やQ&Aに、この形を直接取り上げた記載はありません。計画の段階で、一般送配電事業者と、管轄の経済産業局(1万kW以上やエリアをまたぐ場合は経済産業省)に確認することが不可欠です。
  • FIT/FIPの認定期間中の発電所を自己託送に使えるかどうか、また認定をどう扱うかは、個別に確認が必要です。
  • FIT/FIPの認定を受けている発電所のSPCの持分・株式を取得すると、再エネ特措法上の「密接関係者の変更」にあたり、変更認定申請と住民説明会等が必要になります。詳しくは発電所の売買・M&Aと住民説明会(変更認定の実務ガイド)をご覧ください。

▶ 卒FIT後の発電所を、再エネ賦課金がかからない電気として自社・グループで活かすための再編の考え方は、卒FIT後は「再エネ賦課金がかからない電気」へ(自家消費・自己託送による発電所の再編)で解説しています。

7. そのほかの実務上の注意点

  • 特定供給の許可:自社以外(グループ会社など)の需要に送る場合などには、電気事業法第27条の33に基づく特定供給の許可が必要になるケースがあります。一般送配電事業者から許可書の提示を求められることがあります。
  • 計画値同時同量とインバランス:自己託送では、発電と需要の計画を30分単位で提出し、計画と実績の差(インバランス)を精算する仕組みに対応する必要があります。天候で発電量が変わる太陽光では、この管理が重要です。
  • 託送料金:送配電網の利用料(託送料金)がかかります。経済性は、託送料金やインバランスの負担も含めて検討します。
  • エリアをまたぐ場合:一般送配電事業者の供給エリアをまたぐ自己託送も可能ですが、間接オークションによる取引が必要になります。
  • 蓄電池:蓄電池を使った自己託送も可能ですが、送配電網から受電した電気を蓄電した場合は認められません。蓄電池に電気を送る発電設備が非電気事業用電気工作物でない場合も認められません。
  • 相談の窓口:個別の案件は、まず一般送配電事業者に相談します。判断がつかない場合は、管轄の経済産業局(東北エリアは東北経済産業局)、1万kW以上またはエリアをまたぐ場合は経済産業省(資源エネルギー庁)が確認先になります。

8. よくある質問

中古の太陽光発電所を購入して、自社工場に自己託送することはできますか?

できません。2024年2月の改正により、他者から購入した既設の発電設備は、自己託送に使えなくなりました。例外は、自社の完全子会社が設置した設備を譲り受ける場合などに限られます。

卒FITになった発電所を、取引先と組合をつくって自己託送に使えますか?

できません。組合型の自己託送は、組合のために新たに設置する再エネ設備に限られます。すでに稼働している発電所や卒FITの発電所は対象外です。

発電所の保守点検を専門業者に委託していても、自己託送はできますか?

できます。維持管理業務を外部に委託していること自体は問題ありません。ただし、設備を維持・運用する根拠を持たずに、名義上だけ管理責任者になる形は認められません。

テナントが入っている自社ビルに自己託送できますか?

原則としてできません。受電した電気を、密接な関係のないテナントにも融通する形になるためです。テナント全員と密接な関係がある場合や、法令に沿って需要場所を整理し、密接な関係のある者にだけ供給することを明確にできる場合などに限り、認められる可能性があります。

発電所の電気の一部を売電し、残りを自己託送に使えますか?

Q&Aでは、発電所の一部(例:3割分)に限って非電気事業用電気工作物とみなすことができるとされています。ただし、FIT/FIPの認定を受けている発電所の場合は、認定との関係を個別に確認する必要があります。

9. 当事務所のサポート

自己託送は、電気事業法と再エネ特措法の両方が関わる制度です。行政書士が、制度面の整理と手続きをサポートします。

  • 自己託送の要件を満たすかどうかの整理(設備の設置者、資本関係・人的関係など)
  • 密接な関係を証する書類、宣誓書などの準備の支援
  • 特定供給の許可申請の書類作成
  • 組合型の自己託送における組合契約書の作成支援
  • FIT/FIP認定を受けている発電所の変更認定申請(持分・株式の取得に伴う密接関係者の変更など)と、住民説明会等の準備

※発電・需要の計画の作成やインバランスの管理、電気工事、保安管理は当事務所の業務範囲外です。小売電気事業者・アグリゲーター、電気主任技術者などの専門事業者と連携して進めます。自己託送の可否は、最終的に一般送配電事業者や経済産業局などの判断によります。

報酬:案件の内容に応じて個別にお見積りします。

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本ページは、2026年10月4日時点の法令・指針・公表資料に基づく一般的な情報です。自己託送の制度は見直しが続いているため、最新の内容は資源エネルギー庁の公表資料をご確認ください。個別の案件で自己託送を利用できるかどうかは、一般送配電事業者や経済産業局などの判断によります。

参考資料:資源エネルギー庁「自己託送に係る指針」(2024年2月12日改正) / 資源エネルギー庁「自己託送に関するQ&A」