卒FITを迎える発電事業者・企業オーナーの方へ
卒FIT後は「売る電気」から
「再エネ賦課金がかからない、使う電気」へ
FITの買取期間が終わると、発電した電気の売電単価は大きく下がります。一方で、企業が電力会社から買う電気には、2026年度は1kWhあたり4.18円の再エネ賦課金がかかります。
自社やグループの発電所の電気を自家消費や自己託送で使えば、その電気には再エネ賦課金がかかりません。卒FITは、発電所の使い方と持ち方を見直す好機です。
- Point 1再エネ賦課金は、電力会社(小売電気事業者)から買った電気にかかります。自家消費・自己託送で使う電気にはかかりません。
- Point 2自己託送に使えるのは、自ら設置した発電所の電気を、自社や資本関係のあるグループ会社に送る場合などに限られます。
- Point 3発電所を買い取って自己託送に使うことはできません。FIT期間中から、発電所の持ち方を設計しておくことが大切です。
最終確認日:2026年10月4日
根拠:再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法、経済産業省「2026年度の再エネ賦課金単価」(2026年3月公表)、電気事業法施行規則第2条・第3条、資源エネルギー庁「自己託送に係る指針」(2024年2月12日改正)、同「自己託送に関するQ&A」
1. 再エネ賦課金がかかる電気・かからない電気
再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)は、FIT/FIP制度で再エネ電気を買い取るための費用を、電気の利用者が使用量に応じて負担する仕組みです。単価は全国一律で、毎年度、経済産業大臣が定めます。
- 2026年度の単価:1kWhあたり4.18円(2026年5月検針分〜2027年4月検針分)
| 電気の調達方法 | 再エネ賦課金 |
|---|---|
| 電力会社(小売電気事業者)から買う電気 再エネ電気をPPA(電力購入契約)で小売電気事業者を通じて買う場合も含む |
かかる |
| 同じ敷地内の発電設備で発電し、自分で使う電気(自家消費) | かからない |
| 自己託送で、自社やグループ会社の工場などに送って使う電気 | かからない |
計算例(再エネ賦課金の部分だけ)
工場で年間50万kWhを、自社の卒FIT発電所からの自己託送でまかなえた場合
50万kWh × 4.18円 = 約209万円(2026年度単価の場合)
この分の再エネ賦課金は、電力会社から買う場合と違って発生しません。
※あくまで再エネ賦課金に相当する額の計算例です。実際の損益は、託送料金やインバランス費用、管理コストなどを差し引いて判断する必要があります(第5節)。また、自己託送で足りない分を電力会社から買う場合、その分には再エネ賦課金がかかります。
2. 卒FIT後の選択肢と再エネ賦課金
FITの買取期間が終わった後の発電所の使い方は、主に次の4つです。電気を使う側に立ったとき、再エネ賦課金がかかるかどうかが分かれます。
| 選択肢 | 内容 | 使う側の再エネ賦課金 | 向いている事業者 |
|---|---|---|---|
| 売電を続ける | 小売電気事業者などに、相対・自由契約で売る | かかる 買った需要家が負担 |
自社で電気を使う予定がない事業者 |
| PPA(電力購入契約) | 小売電気事業者を通じて、特定の企業に再エネ電気として供給する | かかる | 資本関係のない企業に電気を届けたい事業者 |
| 自己託送 | 自社やグループ会社の別の場所にある工場などへ、送配電網を通じて送る | かからない | 自社・グループに電気を使う工場や事業所がある事業者 |
| 発電所を売却する | 発電所や、発電所を持つ会社を売る | 買い手の使い方による | 発電事業から撤退したい事業者 |
このページでは、自己託送を軸に、発電所の持ち方を組み替える「再編」を中心に解説します。自己託送の要件の詳細は、自己託送の要件と注意点のページをご覧ください。
3. 発電所再編の3つのパターン
パターンA:自社の発電所を、自社・グループの工場に振り向ける
自社(またはグループ会社)が自ら設置した発電所の電気を、卒FIT後、自社やグループ会社の別の場所にある工場・事業所に自己託送で送ります。最も分かりやすく、要件も確認しやすい形です。
- 送電先がグループ会社(親会社・子会社・兄弟会社など)の場合は、資本関係などの「密接な関係」が必要です。
- 自社以外の需要に送る場合などは、特定供給の許可が必要になるケースがあります。
パターンB:発電所を持つ会社(SPC)ごと、電気を使う企業のグループに入れる
発電所を自ら設置した合同会社(SPC)などの持分・株式を、工場などを持つ企業(需要家)が取得し、SPCを需要家の子会社にします。SPCは引き続き自ら設置した発電所を維持・運用し、親会社となった需要家の工場に自己託送で送る形です。売る側は発電所の価値を活かしたEXITになり、買う側は再エネ賦課金のかからない電気を確保できる可能性があります。
パターンBは、必ず事前確認が必要です
- 「発電所そのもの」を買うのではなく、「発電所を自ら設置した会社」をグループに迎える点が重要です。発電所だけを買い取った場合は、自己託送に使えません。
- この形は、指針やQ&Aで直接取り上げられているわけではありません。計画の段階で、一般送配電事業者と管轄の経済産業局(1万kW以上やエリアをまたぐ場合は経済産業省)に確認することが不可欠です。
- FIT期間中にSPCの持分・株式を取得すると、再エネ特措法上の「密接関係者の変更」となり、変更認定申請と住民説明会等が必要です(住民説明会の実務ガイド)。
- FIT/FIPの認定期間中の電気を自己託送に回せるかどうか、認定をどう扱うかは、個別に確認が必要です。
パターンC:新しく発電所を設置し、組合型で需要家とつなぐ
資本関係のない企業どうしでも、共同で組合を設立し、組合員が新たに設置する再エネ発電所(FIT/FIPの認定を受けないもの)であれば、組合型の自己託送が認められます。卒FIT発電所の跡地や隣接地で新たに設置する場合などが考えられます。
- 既存の卒FIT発電所そのものは、組合型には使えません。組合型は新設設備に限られます。
- 組合は、民法上の組合や有限責任事業組合(LLP)が対象です。匿名組合・中小企業等協同組合は対象外です。
- 組合契約書に、長期にわたり存続すること、電気料金の決め方、工事費用の負担方法などを定める必要があります。
4. 認められない再編の形
国は2024年2月、制度の趣旨に合わない自己託送が増えたことを受けて、指針を改正し要件を厳しくしました。次のような形は認められません。
| 認められない形 | 理由 |
|---|---|
| 他社が設置した既設の発電所(卒FIT発電所を含む)を購入して自己託送に使う | 自ら設置した設備ではないため(完全子会社が設置した設備の譲受けを除く) |
| 発電所をリースやエネルギーサービス契約で借りて、自己託送に使う | 他者が設置した設備の貸与にあたるため |
| 設備を維持・運用する根拠がないまま、名義上だけ管理責任者になる | 実際に維持・運用しているとは言えないため |
| 受け取った電気を、密接な関係のないテナントなどに融通する | 最終消費者への供給の要件を満たさないため |
| 既存の卒FIT発電所で、資本関係のない会社と組合型の自己託送をする | 組合型は新設設備に限られるため |
※自己託送の利用には、自ら設置した設備であることや密接な関係を証する書類の提出、宣誓書の提出が求められ、虚偽があれば契約の解除を受け入れることにあらかじめ同意する必要があります。自己託送の制度は見直しが続いているため、今後さらに要件が変わる可能性もあります。
5. 経済性を判断するときの注意点
再エネ賦課金がかからないことは大きなメリットですが、自己託送には次のような費用や手間もかかります。卒FIT後の売電単価と比べて、総合的に判断することが大切です。
- 託送料金:送配電網の利用料がかかります。
- 計画値同時同量とインバランス:発電と需要の計画を30分単位で提出し、計画と実績の差を精算します。天候で発電量が変わる太陽光では、この管理の負担と費用が重要になります。多くの場合、専門の事業者(アグリゲーターなど)への委託を検討します。
- 不足分の電気:夜間や悪天候時など、自己託送で足りない分は電力会社から買う必要があり、その分には再エネ賦課金がかかります。
- 設備の寿命と維持費:卒FIT発電所はパネルやパワーコンディショナーの劣化が進んでいることがあります。保守点検、修繕、将来の廃棄費用も見込む必要があります。
- 手続きの費用:特定供給の許可、資本提携に伴うFITの変更認定・住民説明会など、再編の形によって手続きが必要です。
6. 再編の進め方
自己託送への切り替えは、FITの買取期間が終わってから動き始めると間に合わないことがあります。FIT期間の残りが数年あるうちから準備を始めることをおすすめします。
- STEP 1現状の把握
発電所を設置したのは誰か、FITの買取期間の終了時期、発電量の実績、設備の状態を確認します。 - STEP 2電気を使う先との関係の整理
自社の別拠点か、グループ会社か、資本関係のない企業か。必要に応じて、資本提携や組合の設立を検討します。 - STEP 3一般送配電事業者・経済産業局への事前確認
計画している形で自己託送が認められるかを確認します。 - STEP 4必要な手続き
資本提携に伴うFITの変更認定申請と住民説明会等、特定供給の許可申請など。 - STEP 5運用体制の構築
計画値同時同量・インバランスの管理を担う事業者や、保守点検の体制を整えます。 - STEP 6自己託送の契約・開始
一般送配電事業者との契約を結び、卒FITのタイミングに合わせて切り替えます。
7. よくある質問
自己託送にすれば、工場の電気代から再エネ賦課金がすべてなくなりますか?
なくなるのは、自己託送で送った電気の分だけです。夜間や悪天候時など、自己託送で足りない分を電力会社から買う場合、その分には再エネ賦課金がかかります。
近くの卒FIT発電所を買い取って、自社工場に自己託送することはできますか?
できません。2024年2月の指針改正により、他者から購入した既設の発電所は自己託送に使えなくなりました。発電所を自ら設置した会社を、資本提携によってグループに迎える方法(パターンB)は考えられますが、事前に一般送配電事業者と経済産業局への確認が必要です。
電気を使う工場を持っていない発電事業者は、どうすればよいですか?
自社で電気を使わない場合、自己託送のメリットは直接は得られません。電気を使う企業との資本提携(パターンB)、PPAによる供給、売電の継続、発電所の売却などを比較して検討します。
FIT期間がまだ残っています。いつから準備すればよいですか?
資本提携を伴う場合は、FITの変更認定と住民説明会等に数か月以上かかります。一般送配電事業者や経済産業局への確認、運用体制づくりも必要です。FIT期間の終了の数年前から検討を始めることをおすすめします。
8. 当事務所のサポート
行政書士が、卒FIT後の発電所の再編について、制度面の整理と手続きをサポートします。
- 現状の整理(発電所の設置者、FITの終了時期、資本関係など)と、再編パターンの選択肢の整理
- 自己託送の要件の確認と、密接な関係を証する書類・宣誓書の準備の支援
- 特定供給の許可申請の書類作成
- 組合型の自己託送における組合契約書の作成支援
- 資本提携に伴うFITの変更認定申請と、住民説明会等の準備
※発電・需要の計画の作成やインバランスの管理、電気工事、保安管理、税務は当事務所の業務範囲外です。小売電気事業者・アグリゲーター、電気主任技術者、税理士などの専門家と連携して進めます。自己託送の可否は、最終的に一般送配電事業者や経済産業局などの判断によります。再エネ賦課金に相当する額の削減を、特定の金額でお約束するものではありません。
対応エリア:住民説明会・事前周知措置を伴う手続きは、東北6県(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)と新潟県です。
報酬:案件の内容に応じて個別にお見積りします。
「うちの卒FIT発電所は、自社で使える?」「グループ再編でどこまでできる?」
FITの終了時期と、電気を使う先の状況をお聞かせください。
本ページは、2026年10月4日時点の法令・指針・公表資料に基づく一般的な情報です。再エネ賦課金の単価は毎年度見直され、自己託送の制度も見直しが続いています。最新の内容は経済産業省・資源エネルギー庁の公表資料をご確認ください。個別の案件で自己託送を利用できるかどうかは、一般送配電事業者や経済産業局などの判断によります。
参考資料:資源エネルギー庁「自己託送に係る指針」(2024年2月12日改正) / 資源エネルギー庁「自己託送に関するQ&A」
