投資家・発電所オーナー・SPC運営者の方へ

発電所を売る・買う・会社ごと譲る前に
「住民説明会」が必要かを確認してください

2024年4月から、FIT/FIP認定を受けた発電所の売買やM&Aでは、変更認定申請の前に周辺住民への説明会または事前周知措置(以下「説明会等」)を行うことが、認定の要件になりました。
対象は事業譲渡だけではありません。合同会社(SPC)の持分や株式を売る「会社ごとの売却」も対象です。準備を誤ると、スケジュールが数か月単位で遅れることがあります。

  • Point 1事業譲渡・合併・会社分割による事業者の変更と、持分・株式の売却による密接関係者の変更が対象です。
  • Point 2説明会等は契約締結後〜変更認定申請の3か月前までに行います。
  • Point 32024年4月より前に認定を受けた発電所は、初回の譲渡時に全項目の説明が必要になることが多くあります。

最終確認日:2026年10月4日
根拠:資源エネルギー庁「説明会及び事前周知措置実施ガイドライン」(2026年4月改訂)、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則

1. 説明会等が必要になる取引

FIT/FIP認定を受けた発電事業の「重要な事項」を変更するときは、経済産業大臣の変更認定が必要です。そのうち次の変更では、変更認定の前に説明会等を行わなければなりません(施行規則第8条の2)。

① 認定事業者の変更

発電事業そのものを他の事業者に移す場合です。

  • 事業譲渡(発電所の売買)
  • 合併
  • 会社分割
  • 競売・担保権の実行による取得 など

② 密接関係者の変更

認定事業者(SPC等)は変わらず、その持ち主が変わる場合です。

  • 合同会社の社員の変更(持分の譲渡)
  • 株式会社の議決権の過半数を持つ株主の変更
  • 匿名組合出資の過半数を持つ出資者の変更
  • 上記の者の親会社の変更

「会社ごと買うから関係ない」は通用しません

密接関係者には、過半数株主などの親会社も含まれます。親会社は直接の親会社に限られず、その上の親会社も含まれます。そのため、発電事業とは関係のない企業グループの買収であっても、グループ内の会社がFIT/FIP発電所を持っていれば、説明会等が必要になることがあります。複数階層の出資や匿名組合が使われているスキームでは、個別の確認が欠かせません。

説明会等が不要な名義変更

  • 相続による名義変更(事後変更届出で手続きします)
  • FIT制度からFIP制度への移行に伴う認定
  • 出力10kW未満の住宅用太陽光、屋根設置区分の太陽光(屋根設置の区分は名義変更の総合ページのよくある質問をご覧ください)

※売買以外にも、設置場所の変更や、出力・パネル容量を一定以上(20%以上または50kW以上)増やす変更などでも説明会等が必要です。

2. 説明会か事前周知か(判定の基準)

必要な措置は、変更後の計画内容をもとに、発電所の出力と設置場所で決まります。

設置場所・出力 必要な措置
影響の大きいエリア内(下記①〜③)
出力を問わない
説明会
エリア外の高圧・特別高圧(50kW以上) 説明会
※長期安定適格の特例あり(下記)
エリア外の低圧(50kW未満)で、敷地境界から100m以内に同一事業者等の発電所があり、合計出力が50kW以上になる場合 説明会
※長期安定適格の特例あり(下記)
エリア外の低圧(上記以外) 説明会 または 事前周知措置
ポスティング等による周知

「影響の大きいエリア」とは

  1. 認定申請要件許認可の対象エリア
    林地開発許可の対象となる地域森林計画対象民有林、盛土規制法の規制区域(許可が必要な場合)、砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域 など
  2. 土砂災害警戒区域(土砂災害特別警戒区域を含む)または土石流危険渓流
  3. 条例で自然環境・景観の保護エリアとして定められた区域

自治体のウェブサイトの地図だけでは境界がはっきりしないことも多く、条例の有無も自治体ごとに異なります。最終的には、発電所の所在地を管轄する市町村に確認するのが確実です。

見落としやすい2つのルール

100m合算ルール(低圧)

低圧でも、100m以内に同じ事業者の発電所があり、合計で50kW以上になると説明会が必要です。この「同一の事業者等」には密接関係者も含まれるため、低圧発電所をまとめて取得・集約するときは特に注意が必要です。

長期安定適格の特例

エリア外の太陽光で、認定事業者またはその密接関係者が「長期安定適格太陽光発電事業者」の適格認定を受けている場合は、説明会に代えて事前周知措置でもよいとされています。ただし、適格認定を受けた者から受けていない者へ変更する場合は対象外です。

説明の対象となる「周辺地域の住民」

  • 低圧:敷地境界から100m以内の居住者
  • 高圧・特別高圧:敷地境界から300m以内の居住者(環境アセスメント第一種事業は1km)
  • 発電所に隣接する土地・建物の所有者
  • 市町村との事前相談で、市町村から追加するよう意見があった方

※事前周知措置の場合は、敷地境界から100m以内の居住者が対象です。

3. スケジュールと「3か月ルール」

説明会等は、譲渡契約の締結後(対外的に公表する場合は公表後)から、変更認定申請の3か月前までに行う必要があります。契約前に行った説明会は、変更認定のための説明会としては使えません。

  1. STEP 1譲渡契約の締結(または公表)
  2. STEP 2市町村への事前相談
    説明の対象とする住民の範囲を相談し、市町村の意見を受け取ります。
  3. STEP 3開催案内(説明会の2週間前まで)
    ポスティング・戸別訪問・回覧板などで案内し、資源エネルギー庁のシステムにも登録します。
  4. STEP 4説明会の開催
    旧事業者・新事業者の双方が出席し、全体を録音・録画します。
  5. STEP 5質問の受付と書面回答
    説明会後2週間以上、質問を受け付けて書面で回答します。
  6. 待機説明会等から3か月が経過するのを待つ
  7. STEP 6変更認定申請(再生可能エネルギー電子申請)
  8. STEP 7変更認定 → 電力会社での名義・口座の変更

押さえておきたいポイント

  • 「申請日」は書類が最初に届いた日です。不備の補正にかかった日数は含まれません。
  • 説明会に出席する周辺住民がいなかった場合は、3か月を待たずに申請できます。ただし、その場合でも説明会の準備をして会場で待機する必要があります(一定の条件を満たし、所有者から出席希望がない場合を除く)。
  • 事前周知措置で、敷地境界から100m以内に居住者がいないことを確認できた場合は、事前周知措置自体が不要になります。
  • 変更認定の申請には年度ごとの申請期限日があります。毎年度、資源エネルギー庁が公表する期限日を必ず確認してください。

最大のリスクは「説明会のやり直し」

説明項目に不足があると、経済産業局から説明会の再実施を求められることがあります。やり直しになると、そこからさらに3か月以上かかり、クロージングが大きく遅れます。配付資料は、ガイドラインの説明項目をすべて満たしているか、事前に入念に確認することが重要です。

4. 既存の発電所を売買するときの注意点

説明する範囲は「過去の説明会」で変わる

過去の説明会の状況 今回説明すべき範囲
再エネ特措法に基づく説明会等を行っていない すべての説明項目(新規認定のときと同じ)
法定の要件を満たす説明会等をすでに行っている 前回から変更があった事項に関する項目

「すでに行っている」とは、2024年4月1日より後の新規認定・変更認定の際に行った説明会等や、法定の要件をすべて満たした任意の説明会などを指します。
そのため、2024年3月以前に認定を受けた発電所の多くは、初めて売買するときに全項目の説明が必要になります。安全面の影響、反射光や雑草対策、廃棄費用の積立状況など説明項目は多岐にわたり、資料作りに相応の時間がかかります。

事業者の変更で特に説明が必要になる事項

  • 関係者情報:新しい事業者の代表者・役員、主な出資者、保守点検責任者
  • 自治体や住民と結んだ協定等の承継:協定を引き継ぐ予定であること、引継ぎのスケジュールや手続き、内容を変える場合はその内容

引き継ぐべきもの

  • 過去の説明会の録音・録画:事業譲渡等で認定事業者が変わるときは、記録媒体を新しい事業者に引き継ぐ必要があります(調達期間・交付期間の終了まで保管が必要)。
  • 過去の説明会の配付資料、議事録、質問への回答書面
  • 自治体・地元との協定書や合意書

※破産など法定の手続きによる事業譲渡では、説明会への出席・事前周知の名義は新しい事業者のみでよいとされています。

5. 売買契約で決めておきたいこと

説明会等の手続きは、売主・買主の双方に関わります。後からもめないよう、売買契約(譲渡契約)の段階で次の点を決めておくことが大切です。

検討項目 主な内容
実施主体と費用負担 事業者の変更では売主・買主の双方が出席・名義人となります。持分譲渡では対象会社(SPC)が実施するため、売主が対象会社に実施させる義務を定めます。会場費・印刷費などの負担も決めておきます。
引渡し(クロージング)の時期 ①説明会の前、②説明会の後、③説明会から3か月経過後のいずれかを選びます。一般に売主は早い時期を、買主は確実性の高い③を望むため、事前の協議が必要です。
引渡しの前提条件 説明会等の完了と3か月の経過、説明会を行ったことを示す資料の提出などを条件にするかを検討します。
売主が保証する事項 過去の説明会の実施状況、エリアの該当性、協定等の有無と内容などが正確であることを確認します。
やり直しになった場合 説明会の不備で再実施になったときの費用負担や責任の所在を定めます。
売電収入の帰属 名義変更が完了するまでの売電収入をどちらに帰属させるか、精算方法を定めます。

※本項は一般的な検討事項の整理です。個別の契約条項や、当事者間で紛争が生じている案件の交渉については、弁護士にご相談ください。当事務所では、提携する専門家のご紹介も含めてご案内します。

6. よくある質問

合同会社の持分を売るだけで、発電所の名義は変わりません。それでも手続きが必要ですか?

はい、必要です。認定事業者(合同会社)は変わらなくても、その社員が変わることは「密接関係者の変更」にあたり、変更認定申請と、その前提となる説明会等が必要です。説明会等は対象会社(合同会社)が実施します。

売買契約の前に説明会を済ませておけば、早く手続きできますか?

できません。事業者の変更や密接関係者の変更に伴う説明会等は、変更に係る契約書の締結後(公表する場合は公表後)に行う必要があります。契約前に行ったものは、変更認定のための説明会等として扱われません。

低圧の発電所なら、ポスティングだけで済みますか?

多くの場合は事前周知措置(ポスティング等)で足りますが、次の場合は低圧でも説明会が必要です。

  • 土砂災害警戒区域や、林地開発許可の対象エリアなど、影響の大きいエリアにある場合
  • 敷地境界から100m以内に同一事業者等の発電所があり、合計出力が50kW以上になる場合

分割された低圧発電所をまとめて取得する場合などは、事前の確認をおすすめします。

手続き全体でどのくらいの期間を見込めばよいですか?

説明会等が必要な案件では、市町村への事前相談と開催案内の準備に加えて、説明会等から申請まで3か月以上が必要です。そのうえで申請後の審査期間がかかります。年度ごとの申請期限日もあるため、売買の検討段階、遅くとも契約の前にご相談ください。

7. 当事務所のサポート

行政書士が、説明会等の要否の判定から変更認定申請までを一貫してサポートします。

  • 説明会・事前周知措置の要否の判定(スキーム・エリアの確認)
  • 市町村への事前相談、対象となる住民の範囲の確認
  • 開催案内・説明会配付資料の作成、質問受付フォームの作成と書面回答の作成支援
  • 変更認定申請書類の作成・電子申請、電力会社での名義・口座変更

対応エリア:説明会・事前周知措置が必要な案件は、東北6県(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)と新潟県です。説明会等が不要な案件は全国対応しています。
報酬の目安:名義変更の報酬体系をご覧ください。案件の内容に応じてお見積りします。

「この案件は説明会が必要?」「いつまでに何をすればいい?」
認定通知書や売買の検討資料をもとに、無料で確認します。

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本ページは、2026年10月4日時点の法令・ガイドラインに基づく一般的な情報です。制度は改訂されることがあるため、最新の内容は資源エネルギー庁の公表資料をご確認ください。個別の案件については、ご相談いただいたうえで判断します。

参考資料:資源エネルギー庁「説明会及び事前周知措置実施ガイドライン」(2026年4月改訂)