
災害時協力協定とは、太陽光発電所の事業者と地元の自治体が、災害や長い停電のときに何をどう協力するかを約束する協定です。FIT(固定価格買取制度)の買取期間は後半に入り、太陽光発電所は「建てる時代」から「長く動かし続ける時代」へ移っています。これからの事業に欠かせないのが、地元の自治体と住民からの信頼です。このページでは、災害時協力協定の締結支援と、協定書のモデル案をご紹介します。
1.なぜ災害時協力協定なのか
発電所の周りでは、次のような声をよく耳にします。
- 草が伸び放題で、景観や害虫・火災が心配
- 発電所の持ち主や連絡先が分からない
- 名義が変わっても、地域に知らされない
- 大きな災害で停電したとき、発電所は役に立たないのか
こうした不安は、事業者の「やるつもり」だけでは解消されません。何を、誰が、どこまで行うのかを書面にして、自治体と約束することが大切です。書面にしておけば、地域に伝わります。さらに、事業者が交代しても約束が引き継がれます。
2.東北で災害時協力協定が大切な理由
📍 長い停電を経験した東北だからこそ
2011年の東日本大震災では、東北の広い範囲で停電が続き、携帯電話の充電や情報の入手に困った方がたくさんいました。2018年には、地震で北海道全域が停電したこともあります。
東北には、山や農地に建てた太陽光発電所がたくさんあります。地域の中にある発電所が、いざというときに地域を支える力になれば、自治体や住民の見方も変わります。
3.協定で明確にする3つの地域貢献
(1) 除草などの維持管理を、地元のシルバー人材センターへ
発電所の除草や見回りを、地元のシルバー人材センターに優先して委託します。地域に仕事が生まれ、地元の方の目が届くことで、異常の早期発見にもつながります。ただし、発電所内の作業には感電などの危険があります。そのため、事業者が作業範囲と安全上の注意を事前に説明します。
(2) 自立運転コンセントを、災害時に地元住民へ開放
停電時には、発電所の非常用コンセントを地元住民に開放します。たとえば、携帯電話の充電などに使っていただけます。開放する場所・時間・使い方は、自治体と事前に決めておきます。
※ 送電網につながった発電所は、停電中は安全のため自動で止まります。そのため、非常用コンセントには、自立運転機能をもつ機器や蓄電池が必要です。太陽光の場合は日中のみで、使える電力にも上限があります。設備の追加や配線の変更には、電気の保安やFIT認定上の確認が必要です。
(3) 災害時の点検・連絡・復旧への協力
災害が起きたら、まず発電所の被害を点検し、自治体に報告します。破損したパネルによる感電や飛散の危険があれば、立入禁止の措置をとります。さらに、保守会社や電気主任技術者の協力のもと、避難所などの電気設備の点検・復旧に協力します。
4.災害時協力協定の協定書(モデル案)
以下は、自治体と発電事業者が結ぶ災害時協力協定のモデル案です。実際の協定は、発電所の規模や設備に合わせて調整します。また、自治体の地域防災計画や条例の内容とも整合させます。
太陽光発電所の地域共生及び災害時の協力に関する協定書(案)
○○町(以下「甲」という。)と株式会社○○(以下「乙」という。)は、乙が甲の区域内で運営する太陽光発電所(以下「発電所」という。)の地域共生及び災害時の協力に関し、次のとおり協定を締結する。
災害時協力協定の総則(第1条・第2条)
(目的)
第1条 この協定は、発電所の適正な維持管理と地域への貢献を通じて、発電事業の長期安定的な運営と地域の安全・安心の向上を図ることを目的とする。
(対象発電所)
第2条 この協定の対象とする発電所は、別表に掲げるものとする。
平時の地域共生(第3条)
(除草等の維持管理)
第3条 乙は、発電所の除草その他の維持管理業務について、甲の区域内のシルバー人材センターその他地元の団体等に優先して委託するよう努めるものとする。
2 乙は、前項の委託に当たり、作業の範囲、感電防止その他の安全上の注意事項を受託者に説明し、作業の安全を確保するものとする。
3 乙は、発電所の除草を年○回以上行い、周辺の生活環境及び景観に配慮するものとする。
災害時協力協定の中心|災害時の協力(第4条〜第6条)
(非常用電源の開放)
第4条 乙は、大規模な停電が発生した場合において、甲から要請があったとき又は乙が必要と認めるときは、発電所に設置した自立運転機能付きの非常用コンセント(以下「非常用コンセント」という。)を地元住民の利用に供するものとする。
2 非常用コンセントの設置場所、開放の時間、利用の方法その他必要な事項は、甲乙協議のうえ別に定める。
3 非常用コンセントの利用は無償とし、乙は、発電の状況、天候その他の事情により電力を供給できない場合があることを、あらかじめ甲及び利用者に周知するものとする。
(災害時の点検及び報告)
第5条 乙は、甲の区域内で災害が発生したときは、速やかに発電所の被害の状況を点検し、その結果を甲に報告するものとする。
2 乙は、発電所の設備の破損等により周辺に危険が及ぶおそれがあるときは、立入禁止の措置その他必要な措置を講じ、甲に報告するものとする。
(復旧への協力)
第6条 乙は、甲から要請があったときは、乙の業務に支障のない範囲で、保守を委託する事業者及び電気主任技術者の協力を得て、避難所等の電気設備の点検及び復旧に協力するものとする。
連絡体制・費用・安全(第7条〜第10条)
(連絡体制)
第7条 甲及び乙は、この協定の実施に関する連絡責任者を定め、毎年度当初に連絡先を相互に通知するものとする。
2 乙は、発電所の現地標識に、災害時の連絡先を表示するものとする。
(訓練及び情報交換)
第8条 甲及び乙は、必要に応じて防災訓練への参加及び情報交換を行うものとする。
(費用の負担)
第9条 この協定に基づく乙の協力に要する費用は、原則として乙の負担とする。ただし、甲の要請により特別の費用を要する場合は、甲乙協議して定める。
(安全の確保)
第10条 乙は、この協定に基づく協力を行うに当たっては、関係法令及び保安規程を遵守し、二次災害の防止に努めるものとする。
事業者の変更・有効期間等(第11条〜第13条)
(事業者の変更)
第11条 乙は、売買、合併その他の事由により発電所の事業者が変更されるときは、あらかじめ甲に通知するとともに、新たな事業者にこの協定の内容を引き継ぐよう努めるものとする。
(有効期間)
第12条 この協定の有効期間は、締結の日から1年間とする。ただし、期間満了の1か月前までに甲乙いずれからも申出がないときは、さらに1年間更新するものとし、以後も同様とする。
(協議)
第13条 この協定に定めのない事項又はこの協定の解釈に疑義が生じたときは、甲乙協議して定めるものとする。
この協定の締結を証するため、本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各自1通を保有する。
令和 年 月 日
甲 ○○町長 ○○ ○○
乙 株式会社○○ 代表取締役 ○○ ○○
別表(対象発電所):発電所の名称、所在地、発電出力、設備ID、非常用コンセントの有無と設置場所
5.災害時協力協定を結ぶ前に確認すること
協定は、守れる内容でなければ意味がありません。そのため、締結の前に次の点を確認します。
- 設備:パワーコンディショナの自立運転機能、蓄電池の要否、設置場所の安全性
- 保安:高圧の発電所では、電気主任技術者の保安規程との整合
- FIT認定:配線の変更や自家消費を伴う場合の、変更認定・届出の要否
- 自治体の計画・条例:地域防災計画での位置付け、再エネ条例に基づく協定との関係
- 関係法令の手続:建設当時の手続きに漏れがないか
特に、関係法令の手続きは、協定の前に整えておくことが大切です。そうすることで、自治体の信頼につながります。再エネ特措法の制度については、資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」で確認できます。
6.当事務所の災害時協力協定の締結支援
金惠英(ジン)行政書士事務所では、事業者と自治体との災害時協力協定の締結を、次のとおりお手伝いします。
- 協定書(案)の作成と、自治体との協議・調整
- 関係法令の手続状況の確認(建設当時の手続きの整理を含む)
- FIT/FIP認定の変更手続きとの整合の確認
- 名義変更・事業譲渡・合併のときの協定の引継ぎと、自治体への通知
- 住民説明会での、地域共生の取り組みの説明
- 毎年度の連絡先名簿の更新のお手伝い
7.災害時協力協定のよくあるご質問
Q.小さな発電所でも協定を結べますか?
はい、結べます。たとえば、除草の地元委託や災害時の連絡体制だけでも、立派な地域貢献です。発電所の規模に合わせて、できる内容から始めます。
Q.非常用コンセントがない発電所でも大丈夫ですか?
大丈夫です。その場合は、非常用電源の条文を外し、点検・連絡・復旧協力を中心にした協定にします。設備を追加するときに、あらためて条文を加えることもできます。
Q.発電所を売却・合併するとき、協定はどうなりますか?
モデル案では、事業者が変わるときに自治体へ通知し、新しい事業者に引き継ぐよう定めています。当事務所では、名義変更の手続きとあわせて、協定の引継ぎもお手伝いします。
8.まとめ|災害時協力協定で地域とともに
地元に根ざした中小の事業者が、自治体とともに長く発電を続けること。それが、地域のエネルギーを守ることにつながります。災害時協力協定は、その第一歩です。
長期安定的な事業者を目指す取り組みについては、「長期安定適格太陽光発電事業者」の適格認定と、認定後の特例もご覧ください。自治体の条例については太陽光規制条例の記事を、卒FIT後も発電所を地域で生かす考え方は卒FIT後の選択肢をご覧ください。発電所の売買や合併の手続きは、発電所の売買・M&Aと住民説明会で解説しています。
自治体との災害時協力協定の締結や、名義変更・説明会のご相談は、お気軽にお問い合わせください。
金惠英(ジン)行政書士事務所
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