太陽光発電は、日本の数少ない「国産のエネルギー」です。その発電所を、FIT・FIPの期間が終わった後も長く動かし続けるために、2025年4月に「長期安定適格太陽光発電事業者(以下、適格事業者)」という認定制度が始まりました。
認定の要件には「上場企業」とあわせて「地方公共団体の出資を受けている者」が並んでいます。この記事では、中小企業が地元の自治体と手を組み、地域に除草や点検をお願いしながら、適格事業者を目指すという道筋を考えます。
制度のルールをおさらい
適格事業者は、全国に散らばる小さな発電所をまとめて引き受け、次の世代まで発電を続ける「責任ある担い手」として、経済産業大臣が認定する事業者です。主な要件は次のとおりです。
認定の主な要件
- 地域の信頼:関係法令(条例を含む)を守ること。地域との共生と保安の取組方針を自社のホームページに載せること
- 管理体制:上場企業、または地方公共団体の出資を受けている者であること
- 長く続ける約束:発電所を集めて長く続けることを中期経営計画などで約束し、集める容量と続ける期間の目標を数字で示すこと(少なくとも低圧の発電所を含む)。毎年度、評価結果を公表すること
- 実績:申請者とその密接関係者で、運転中の太陽光発電事業が合計50,000kW以上(FIT・FIPによらない事業、または2017年度以降に認定された事業)
認定を受けると、変更認定のときの説明会がポスティングなどの事前周知で済む、電気主任技術者の統括制度を使いやすくなる、廃棄費用の積立を分けて行える、売却希望の情報を先に受け取れる、といった特例があります。
国も「自治体が関わる集約」に期待している
この制度を議論した国の審議会では、次のようなやり取りがありました。
委員の意見
事業規模が小さくても地域の課題に応えるケースがある。地域や自治体が主体となった取組を妨げないようにすべき。
資源エネルギー庁の考え方
地域に根ざした事業集約は重要。自治体が関与する形で集約を進めることも、一つのモデルになり得る。
具体的な措置
発電所の売却希望者の情報を、適格事業者だけでなく、希望する自治体にも先に提供する。
今後の見直し
50,000kWの基準は、制度の活用状況を見て、必要に応じて見直しを検討するとされている。
「自治体の出資を受けている」ことが要件になっているのは、自治体が議決権の行使や役員の派遣を通じて経営に関わり、しっかりした管理体制が期待できるからだと説明されています。地元の自治体と組むことは、上場と並ぶ正面からのルートなのです。
中小企業が自治体と目指す道筋
正直に言えば、50,000kWの実績要件は高いハードルで、中小企業が今すぐ単独で認定を受けるのは難しいのが現実です。だからこそ、自治体と組み、地元に支えられながら段階的に目指すことが大切だと考えます。
1. 自治体と組む
地域新電力やまちづくり会社など、自治体が出資する会社をつくる、または参加する。脱炭素やエネルギーの地産地消という地域の目標を共有します。
2. 地元の発電所を引き継ぐ
FIT・FIPの終わりが近い低圧発電所や、後継ぎのいない発電所を、地域の会社が引き継ぎます。自治体に届く売却希望の情報も活かせます。
3. 維持管理は地元で
除草、見回り、簡単な点検を、地元の農家さんや高齢者の方、シルバー人材センターなどにお願いします。地域に仕事とお金が回り、発電所が「地域のもの」になります。
4. 実績を積み上げる
引き継いだ発電所を、自治体出資会社が過半数を持つ会社で保有するなどして、認定の対象となる実績を少しずつ積み上げます。
誤解しやすい点
- 50,000kWに数えるのは、申請者とその密接関係者(議決権や出資の過半数を持つ会社など)が発電事業者として運転している発電所です。他社の発電所の保守を請け負った実績や、資本関係のない会社どうしの合算は数えられません。
- これから買う予定の発電所は数えられません。運転を始めているものが対象です。
- 適格事業者でない会社が50kW以上の発電所を引き継ぐときは、これまでどおり説明会が必要です。
なぜ「地元に維持管理をお願いする」ことが大切なのか
- 地域の信頼:国は、事業者が変わるときに地域とのトラブルが起きやすいことを重く見ています。顔の見える地元の人が手入れをしていれば、住民の安心につながります。
- 長く安定した発電:草刈りや見回りをこまめに行うことで、故障や火災のリスクを早く見つけられます。
- 国内エネルギーの維持・向上:地元で管理された発電所が長く動き続けることは、輸入燃料に頼らないエネルギーを守ることにつながります。
- 地域にお金が回る:売電の利益の一部が、管理の仕事として地元に戻ります。
金惠英(ジン)行政書士事務所は、地元と歩む中小企業を応援します
太陽光発電の集約は、大きな資本を持つ上場企業だけの仕事ではありません。地元の自治体と手を組み、地域の人に支えられて発電所を守る中小企業こそ、地域から信頼される担い手になれると、当事務所は考えています。
当事務所は、東北で太陽光発電の名義変更や説明会・事前周知の手続きを数多く扱ってきました。その経験を活かし、地元と共生する中小企業と自治体の取組を、手続きの面から支えます。
当事務所がお手伝いできること
- 引き継ぐ発電所の名義変更(変更認定)の申請
- 説明会・ポスティングなど事前周知の計画と実施
- 廃棄費用の積立の確認
- 適格事業者の認定要件の整理と、申請書類の準備
- 自治体・地元関係者との調整に必要な書類の作成
自治体と組んで地元の発電所を引き継ぎたい、適格事業者の認定に向けて何から始めればよいか知りたい、という中小企業・自治体の皆様、まずはご相談ください。
地域の太陽光の集約について相談するよくある質問
- 自治体の出資の割合に決まりはありますか?
- 申請書の様式では「地方公共団体の出資を受けている者」とされ、出資の割合は示されていません。ただし、自治体が経営に関わることが前提とされているため、形だけの出資にならないよう、関わり方を自治体とよく話し合うことが大切です。
- 認定を受ける前でも、地元の発電所を引き継げますか?
- はい。認定がなくても、変更認定の手続きと、必要な説明会や事前周知を行えば引き継げます。引き継いだ発電所は、要件を満たせば将来の実績にもなります。
- 除草などを地元に頼むとき、気をつけることはありますか?
- 作業の範囲、安全対策、費用、緊急時の連絡先を契約で決めておくことが大切です。電気設備に触れる作業は、電気主任技術者や専門業者の管理のもとで行います。
関連ページ
※ この記事は2026年10月時点の公開資料をもとにしています。制度の運用や要件は見直されることがあります。
参考:資源エネルギー庁「長期安定適格太陽光発電事業者」、長期安定適格太陽光発電事業者認定申請書・記載要領、再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会資料(2024年11月28日)
金惠英(ジン)行政書士事務所

