2026年10月更新(経済産業省「主任技術者制度に関するQ&A」令和8年10月版ほかにもとづく)

経済産業省が「主任技術者制度に関するQ&A」の令和8年10月版を公表しました。太陽光発電所の保安では、長期安定適格太陽光発電事業者のグループなら、設置者が違う発電所でも1人の電気主任技術者がまとめて管理(統括)できることが、引き続き明記されています。

この記事では、Q&Aのポイントと、その背景にある国の検討の方向性を、太陽光発電所のオーナー向けに解説します。

そもそも「主任技術者制度」とは

出力50kW以上の高圧の太陽光発電所など、事業用の電気設備を持つ人(設置者)は、電気の保安を監督する電気主任技術者を置く必要があります。自社で雇って選任するほか、電気保安法人や電気管理技術者に保安管理を任せる「外部委託」の方法もあります。

10kW以上50kW未満の低圧の太陽光発電所は「小規模事業用電気工作物」にあたり、電気主任技術者の選任は不要です。そのため、この記事の保安の内容は、主に高圧の発電所をお持ちの方に関わります。

Q&Aのポイント1:「統括」は原則、同じ設置者の発電所だけ

複数の発電所を、1つの保安組織で1人の電気主任技術者がまとめて管理することを「統括」といいます。Q&Aでは、統括は原則として同じ設置者が自分の複数の発電所を一体で管理する場合に限られ、設置者が違えば、委託契約を結んでも認められないとされています。

親会社と子会社のように資本関係がある場合は、保安体制について覚書を結ぶなどして支障がないと示せれば、個別に審査されます。

Q&Aのポイント2:長期安定適格事業者のグループは統括できる

2025年4月に始まった長期安定適格太陽光発電事業者(適格事業者)の制度に合わせて、次の場合は設置者が違っても統括できるとされています。令和8年10月版のQ&Aでも、この扱いが明記されています。

  • 統括する太陽光発電所の設置者が、いずれも適格事業者である場合
  • 適格事業者を密接関係者とする者(適格事業者が公表する「保安の確保等に関する取組方針」の対象者に限ります)である場合

密接関係者には、適格事業者が議決権の過半数を持つ会社や、匿名組合出資の過半数を出している事業者などが含まれます。つまり、適格事業者を中心としたグループの発電所を、まとめて保安管理できる仕組みです。

ご注意

  • 統括には、遠隔監視の設備や、現場の担当技術者の配置など、内規で定める要件をすべて満たす必要があります。
  • 統括する発電所が7以上になる場合は、業務量の管理、統一的な保安管理、広域災害への備えといった追加の要件が求められます。
  • 外部から選任した電気主任技術者による統括は、原則として認められません。
  • 判断が難しい場合は、事前に産業保安監督部(東北地方は関東東北産業保安監督部東北支部)への相談が必要です。

Q&Aのポイント3:電気管理技術者が太陽光発電所を持つ場合

外部委託を受けている電気管理技術者が、自宅の隣の土地などでFITの太陽光発電所を持つことも、受託している業務に支障がない範囲で認められています。ただし、自分の発電所の保安管理を自分で受託することや、自分を電気主任技術者に選任することは認められません。

国の検討の方向性

今回のQ&Aの背景には、太陽光発電を「集約して、長く使う」方向へ導こうとする国の考え方があります。

方向性主な内容
長期安定電源化第7次エネルギー基本計画(2025年2月)を受け、2025年4月に長期安定適格太陽光発電事業者の制度が始まりました。責任ある事業者に発電所を集約し、FIT/FIPの期間が終わった後も発電を続けてもらうことを目指しています。
適格事業者への特例統括のほか、売買などの計画変更のときに説明会を事前周知(ポスティング等)に代えられる特例(適格事業者から適格でない事業者へ譲る場合は対象外)、パネル増設時の廃棄費用を分割して積み立てられる特例、売却を希望する事業者の情報を先に受け取れる仕組みがあります。
電気保安人材の不足電気主任技術者の高齢化と、なり手の減少が課題です。経済産業省の審議会は、2030年に電気主任技術者が約2,000人不足するおそれを示しており、2026年2月にも電気保安人材の現状と今後の課題を議論しています。
保安の効率化遠隔監視などを活用した「スマート保安」や、統括・外部委託の範囲の見直しなど、少ない人数でも保安の水準を保てる仕組みづくりが進められています。

2032年以降は、10kW以上の発電所のFIT期間が順に終わり始めます。発電所の集約・売却・引き継ぎは、これからさらに増えると考えられます。

地元の発電所オーナーがとれる選択肢

適格事業者の認定には、主に次のような要件があります。

  • 運転中の太陽光発電事業の実績が合計5万kW以上あること(数えられるのは、FIT/FIPの認定を受けていない事業か、2017年度以降に認定を受けた事業に限られます)
  • 上場企業であること、または地方公共団体から出資を受けていること
  • 地域との共生・保安の確保に関する取組方針を自社のホームページで公表し、毎年度、国に報告すること
  • 中期経営計画などで、低圧を含む発電所を集約し、長期間続ける目標を定めること

地元の中小企業が単独で認定を受けるのは簡単ではありません。それでも、地域で発電所を守り続ける道はあります。

  • 適格事業者のグループに加わる:出資を受けるなどして密接関係者となり、保安の統括や事業の集約のメリットを受ける
  • 自治体と連携する:自治体が出資する地域のエネルギー会社の枠組みで、発電所の運営を続ける
  • 事業を引き継ぐ:信頼できる事業者に、地域との約束ごとごと発電所を引き継ぐ

当事務所は、地元の自治体と共生しながら発電所を守る事業者を応援しています。草刈りや見回りを地元にお願いし、発電所が地域に受け入れられ続けるよう、手続きの面から支えます。

発電所の集約・引き継ぎの手続きはご相談ください

  • 長期安定適格太陽光発電事業者の認定申請サポート
  • 主任技術者の選任・解任届出書、外部委託承認申請、保安規程届出の書類作成
  • 発電所の売買・事業譲渡に伴う名義変更(FIT/FIP変更認定)、住民説明会・事前周知

金惠英(ジン)行政書士事務所
〒980-0821 宮城県仙台市青葉区春日町8-5-302
メール:info@fms-world.com

参考

※本記事は一般的な説明です。個別の発電所で統括や外部委託ができるか、適格認定の要件を満たすかは、所管官庁の判断によります。

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