みなさん、こんにちは。東北・新潟を中心に、太陽光発電の名義変更や各種変更手続き・補助金申請をお手伝いしている「金惠英(ジン)行政書士事務所」です。今回は、卒FIT太陽光の活用法として注目される「自己託送」について解説します。
【卒FIT太陽光】再エネ賦課金がかからない「自己託送」── 同一者型と組合型の違い、使えないケースを解説
FIT期間(固定価格買取制度)が終わった太陽光発電所をお持ちの事業者様、あるいは自社の工場や事業所の電気代にお悩みの経営者様へ。
「売電価格は下がったのに、毎月の電気代(再エネ賦課金や燃料費調整額)は高いまま…」
こうしたお悩みへの選択肢の一つが、「自己託送(じこたくそう)」です。自社で発電した電気を、送配電網(電線)を通して、離れた場所にある自社の工場や事業所に送る仕組みで、一般送配電事業者が提供する送電サービスです。
電力会社(小売電気事業者)から電気を買うわけではないため、自己託送で送った電気には再エネ賦課金がかかりません。
ただし、託送料金、発電側課金、計画どおりに発電・消費できなかった分の差額精算(インバランス)などの費用はかかります。また、どんな発電所でも使えるわけではありません。今回は、自己託送の2つの類型と、使えないケースを、2024年2月12日改正の国の指針に沿って解説します。
■ 自己託送の2つの類型:「同一者・密接関係型」と「組合型」
どちらも自己託送の一種で、電気を送る相手との「関係」が異なります。
1. 自社やグループ会社に送る「同一者・密接関係型」
仕組み: 自社が設置した発電所の電気を、自社の別の場所にある工場や事業所に送ります。親子会社など、資本関係や人的関係、長期の取引関係といった「密接な関係」がある会社に送ることもできます。
ポイント: 発電設備は、電気を送る会社が自ら設置し、維持・運用しているものであることが必要です。
こんな方向け: 自社で設置した卒FIT太陽光をお持ちで、自社やグループ会社の電気代を下げたい企業様。
2. 組合をつくって送る「組合型」
仕組み: 資本関係のない会社同士でも、共同で組合を設立し、一定の要件を満たせば、組合員の間で自己託送ができます(2021年度の見直しで新設)。
ポイント: 使えるのは、組合員が組合員の需要のために新たに設置した専用の発電設備に限られます。既存の卒FIT発電所やFIT認定設備は、組合型では使えません。
組合の形: 民法上の組合や有限責任事業組合(LLP)など、法人格のない組合が対象です。事業協同組合などの中小企業等協同組合や、匿名組合は対象外です。また、長く続くことが前提のため、自由に脱退できる規定のある組合は認められません。
こんな方向け: 自社だけでは発電所を持てないが、複数の会社で新しく発電所をつくり、電気を分け合いたい企業様。
■ 【比較表】2つの類型の違い
両者の主な違いを比較表にまとめました。
| 比較項目 | 同一者・密接関係型 | 組合型 |
|---|---|---|
| 再エネ賦課金 | かからない | かからない |
| 送る相手 | 自社、または資本関係などの密接な関係がある会社 | 共同で設立した組合の組合員 |
| 組合の形 | ― | 民法上の組合・LLPなど(事業協同組合・匿名組合は不可) |
| 使える発電設備 | 電気を送る会社が自ら設置し、維持・運用している設備 | 組合員が新たに設置した専用の設備(FIT認定設備は不可) |
| 既存の卒FIT発電所 | 自ら設置したものなら使える | 使えない(新設が必要) |
| 買い取った発電所 | 原則使えない(完全子会社からの譲渡を除く) | 使えない |
| 主な準備 | 関係を証明する書類、宣誓書 | 組合契約書(存続期間・料金の決め方・費用負担)、組合員名簿、宣誓書 |
| かかる費用 | 託送料金、発電側課金(10kW以上の発電所)、インバランスの精算、計量器などの工事費(設備や契約により異なります) | |
■ 注意!「発電所を買って自己託送」は原則できません
国の指針では、他の人が設置した発電設備を譲渡や貸与で受けて運用する人は、自己託送を利用できないとされています(例外は、完全子会社から譲渡を受ける場合だけです)。
そのため、次のような計画は見直しが必要です。
- 中古の卒FIT発電所を買い取り、自社の工場に自己託送したい
- 社長個人の名義の発電所を会社に移して、会社で自己託送したい
一方で、関連会社が自ら設置した発電所であれば、名義を変えずに関連会社から本社へ自己託送できる場合があります(密接な関係の証明が必要です)。名義を変える前に、まずご相談ください。名義変更をしたことで、かえって自己託送ができなくなることがあります。
すでに自己託送をしている場合も要注意です。2023年12月31日までに申込みが済んでいる自己託送には改正前の指針が適用されます。ただし、申込みのあとに自己託送の利用者の名義を変更すると、この扱いから外れます。
なお、相続や会社の合併で発電所を引き継いだ場合の扱いは指針に明記がないため、事前に一般送配電事業者や経済産業局への確認が必要です。
■ 見落としやすい費用「発電側課金」
2024年度から、発電所にも送配電網の費用の一部を負担してもらう「発電側課金」が始まっています。系統に電気を流している発電所は、原則として対象です。
- 卒FIT発電所は対象: 制度開始前にFIT認定を受けた発電所は、FITの調達期間が終わった後から課金の対象になります。
- 10kW未満は当面対象外: 受電と、系統に流す電気が、どちらも10kW未満の発電所は、当面の間は対象外です。
- 自己託送では利用者の負担に: 課金は送配電事業者と発電者の間の関係で、発電契約者が回収を代行します。自己託送では利用者自身が発電契約者になるため、実質的に利用者の負担になります。
自己託送で電気代がどれだけ下がるかを試算するときは、再エネ賦課金がかからない分だけでなく、発電側課金や託送料金を差し引いて比べることが大切です。単価はエリアごとに異なるため、東北電力ネットワークの「発電側課金の概要」で確認してください。
■ 自己託送を始めるまでの主な手続き
自己託送は許可制ではなく、一般送配電事業者(東北電力エリアなら東北電力ネットワーク)との契約で利用します。主な準備は次のとおりです。
- 利用できるかの確認(設備を自ら設置したか、送る相手と密接な関係があるか)
- 要件を証明する書類と宣誓書の準備(組合型は組合契約書・組合員名簿も)
- 一般送配電事業者への申込みと契約(判断が難しい場合は、経済産業局が確認します。1万kW以上や供給区域をまたぐ場合は経済産業省が確認します)
- 特定供給の許可が必要かの確認(供給のしかたによっては、電気事業法の許可が別に必要です)
- 発電と需要の計画値を出す体制づくり(30分ごとの計画と実績を合わせる「計画値同時同量」への対応。代行事業者との連携を含みます)
組合型の組合は、民法上の組合やLLPなど法人格のない組合で、組合契約書に電気の料金の決め方や費用負担を定める必要があります。事業協同組合などの中小企業等協同組合は対象外なので注意してください。低圧の発電所で自己託送をする場合は、需要が常に発電を上回る必要があるなどの条件があるため、事前に東北電力ネットワークへの確認をおすすめします。
■ 卒FIT太陽光の活用に伴う手続きは当事務所にご相談ください
金惠英(ジン)行政書士事務所では、卒FIT太陽光の活用に伴う「自己託送が使えるかの整理」「要件確認書類・組合契約書の作成」「名義変更手続き」「補助金申請」をサポートしております。
- 「自社の卒FIT太陽光で自己託送ができるか知りたい」
- 「複数の会社で組合をつくり、新しい発電所の電気を分け合いたい」
- 「発電所の名義や権利関係が複雑で困っている」
このようなお悩みのある方は、お気軽に当事務所までご相談ください。
参考
- 資源エネルギー庁「自己託送制度」
- 経済産業省「自己託送に係る指針」(2024年2月12日改正)
- 資源エネルギー庁「自己託送に関するQ&A」
- 中部経済産業局「自己託送制度改正のポイントについて~要件の厳格化の解説~」(2025年11月)
- 東北電力ネットワーク「発電側課金の概要」
※本記事は2026年10月時点の情報にもとづいています。制度は改正されることがあるため、最新の情報は資源エネルギー庁のページでご確認ください。


